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防災専門家に聞いた感染症によるパンデミックの備え方 備蓄品の収納場所は?

(2020.10.21)

新型コロナウイルスによる外出自粛により、必要な物がストレスなく手に入る生活が制限される経験をしました。また地震や台風による災害とは異なり、ライフラインは遮断されずに自宅で過ごさなくてはいけない状況下では、備えておくべき物の種類や量が違ってきます。

コロナ禍の新しい生活が続くことが予想され、新型コロナウイルス以外の新たな感染症が流行する可能性もあります。今までの備蓄品に加え、感染症によるパンデミックが発生した時に備えてストックしておきたいものを見直す必要がありそうです。今回は備え・防災アドバイザーの高荷智也さんにこれからの備えについて教えていただきました。


ミニマルより不安に備える生活へ
ビフォーコロナでは、ストックを必要最低限にしてシンプルに暮らすミニマリストのライフスタイルが注目されていました。コンビニやスーパーに行けば必要な物は揃っていますし、オンラインで注文すればすぐに自宅に届けてもらう生活が当たり前だったので、物を持たずに生活することができました。

しかし、誰もが予想しなかった新型コロナウイルスの感染拡大により外出が制限され、いつでもどこでも買い物や外食ができる生活が一転。何でも揃っていたスーパーから必要な物資がなくなり、オンラインで注文してもなかなか届かないということが起きたのです。

ミニマリスト的な生活スタイルは、一見するとオシャレで環境負荷の小さな次世代の暮らしに見えますが、実は高度な流通網やITインフラなど、社会基盤が万全の場合にのみ成立する、かなり贅沢な暮らし方なのです。「ある日突然物が買えなくなる」という「災害」に備え、最低限の生活物資を手元に置くことが重要であると、直近のパンデミックで気づかされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

地震や台風が発生した時の備えをしている方は多いと思います。新型コロナウイルスによる外出自粛は、水道や電気、ガスなどのライフラインはそのまま使える状態で、自宅で家族が何日間も過ごさなくてはいけないというものでした。特に4月7日に緊急事態宣言が発出され、不要不急の外出や夜間の外出が自粛となり、自宅で過ごす時間が長くなることが予想された時、一時的に次のような物が手に入りにくくなりました。

・自炊が増えることによる、米、パスタ類、小麦粉、ホットケーキミックス
・感染対策としての、マスク、消毒液、ハンドソープ
・口コミにより買い占められた、トイレットペーパー、ティッシュボックス

地震や台風への備えに加え、外出自粛となった時に家に十分な食料品や感染対策グッズがあることが安心に繋がることを身をもって知りました。いつ次のパンデミックが起きても対応できるよう、時間がある時にストックする物を見直すことがとても大切です。


災害によって備える量を調整する
そうは言っても、いつ起きるかわからない自然災害に備え何でもストックしておくことは現実的ではありません。日々の生活をする中で、ストックするスペースにも限界があります。高荷さんによると感染症によるパンデミックに備えるには「ピーク期間が2週間と想定されるので、これに対応するため2週間をひとつの目安」とするのが良いのだとか。

2週間家族が過ごせる物となると結構な量になりそうです。そこで何でも2週間分ではなく、例えば次のように分類することができるそうです。

・最低3日分の飲料水と非常食
大地震や大規模な浸水害など、ライフラインの破壊を含む災害に備えた準備。支援が本格化するのは4日目以降が基準であるため、まず最初の72時間はすべて自力で対応できるようにしておくと安心です。

・できれば7日分の飲料水と食料品
大都市圏に居住している場合は、大規模災害による被害が大きくなりがちで、支援が行き渡るまでに1週間程度の時間がかかる想定もあります。そのため「日常備蓄」により、日持ちする食品などをストックすると役立ちます。

・可能であれば2週間分の備蓄品
感染症パンデミックなど、外出することが難しくなったり、物が入手しづらくなる災害への備え。パンデミックの場合、ライフラインは使える前提として、飲料水を除いた食料品や、日用品のストックを普段から持つようにすると良いでしょう。

それらの備蓄品は、

・地震や火災が発生し、家からすぐに避難する時に必要な安全を確保して命を守るための「非常用リュック」
・家の中にストックしておく「非常用備蓄品」

に分けて準備します。

「非常用リュック」は一刻を争う事態に持ち出せるよう、欲張らずに厳選し重くなりすぎないようにします。置いておくのは玄関や廊下など、パッとつかめる場所が理想ですが、インテリアを邪魔するようならおしゃれなカゴや箱に入れると部屋に馴染みます。

■非常用リュック例
現金、保険証や免許証のコピー
1日分の非常食(カロリーメイトなどの栄養補助食品や羊羹などの菓子類)と水
マスク、ガーゼ、ティッシュ、タオル
アルコール消毒液、簡易手袋
スリッパ、下着
歯磨きセット
携帯ラジオ、モバイルバッテリー
軍手、ビニール袋
懐中電灯、乾電池
救急、応急手当てセット
個人的に必要なもの(メガネ、生理用品、おむつなど)

■非常用備蓄品リスト例

カセットコンロ、カセットボンベ
非常用トイレ
食料品(米、即席麺、缶詰、レトルト食品、嗜好品、菓子類、調味料など)
台所用ラップ、アルミホイル、ごみ袋(大・小、多いほど役立つ)
衛生、生理用品
懐中電灯、電池
ウエットティッシュ、トイレットペーパー
簡易食器(割り箸、紙皿、紙コップ)
鎮痛剤、ビタミン剤、プロテイン栄養補助食品


パンデミックには水より食料品やビタミン剤


感染症によるパンデミックに備えるために高荷さんがアドバイスしてくれたのは、限られた食材で自炊をする中で不足しがちな「タンパク質やビタミン剤を加えること」。米やインスタント食品を食べる機会が多くなる中で、栄養バランスを考える必要が出てくるのがパンデミックの特徴です。今までの備蓄品にビタミン剤やプロテイン栄養補助食品などを追加しておくことで、健康な生活を続けられます。

食料の備蓄で重宝するのは缶詰。農林水産省がまとめた「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド」の食料品チェックリストには、肉、魚の缶詰やコーン、ポテトサラダのような野菜やおかず、桃、みかん、パイナップルなどの果物の缶詰があげられています。缶詰は積み重ねて置けますし、賞味期限が長く加熱せずにそのまま食べられる手軽さがあります。ただし被害の大きなパンデミックなどが生じた場合は、ゴミ回収などのインフラにも影響が生じる場合があるため、ゴミ袋などを多めに備蓄しておき、一定量のゴミを自宅内部で保管できるような準備もしておくと良いでしょう。

中でも子どもに人気のツナ缶(シーチキン)は、サンドイッチにしたりパスタに使ったり大活躍。何缶かストックしておけば、毎日のおかずに困った時にも使える便利な食品です。高荷さんは停電時にツナ缶を使ったランプも紹介しています。ティッシュで芯を作り、ツナ缶に開けた穴に刺し火をつければ、1時間は明かりがつくそうです。火が消えた後のツナ缶はそのまま食べることができるので、覚えておけば役に立ちそうです。

食料品は賞味期限があるので定期的にチェックし、日々の生活の中で上手に備蓄品を使う工夫が必要です。そこで、ストックするのはいつも食べている物にして、ストックがなくなる前に1?2個多めに買い置きするという習慣によって、ストックと生活をスムーズにつなぐことができます。また何がストックされているかパッとわかるように収納しておくことで、ストックしながら消費もできます。


ベランダや玄関ポーチにストックする場所を作り出す


地震や台風など災害時の水やカセットコンロに加え、感染症によるパンデミックに備えた食料品や衛生用品…。家族分となると、かなりのスペースを取りそうで収納場所に悩むご家庭も多いのではないでしょうか。収納場所として、ベランダを検討してみるのも一つの方法です。しかし一般的に「ベランダは、高温多湿となりがちで、備蓄品の保管にはおすすめしません」と高荷さん。それでも備蓄品の収納スペースを確保したい場合は、屋外に面していない内廊下側の玄関ポーチなどにストッカーなどを設置すると良いそうです。また、高温多湿などでも耐えられるものをベランダ収納に格納することで、室内の収納スペースを確保するのも策の一つになるでしょう。

ベランダや玄関ポーチなどに置き場所を確保する際は、ロッカーやボックスを利用してみては? 狭いスペースにも置きやすいサイズのものがあるほか、収納のほかにベランダの椅子やテーブルとして使えるものもあり、活用できそうです。

ベランダや玄関ポーチなどに置くロッカーやボックスにはさまざまなタイプがありますが、ここでは3つのタイプをご紹介します。
※各商品の価格や仕様はコラム掲載時点の情報です。変更になったり、販売を終了している場合もあります。

■アイリスオーヤマ ホームロッカー


画像提供/アイリスオーヤマ

両開きタイプの扉なので、幅がある物でも楽に収納することができます。頑丈なつくりに加え、市販の南京錠が使える金具がついているので盗難対策も安心。ホームロッカー用スチール棚(別売)を使いスペースを区切ることができます。

販売価格:8,350円(税抜) サイズ:幅約75×奥行約50×高さ約85cm
材質:ポリプロピレン、ポリアセタール
https://www.irisplaza.co.jp/index.php?KB=SHOSAI&SID=G228207

■ケター 座れるアウトドア収納ボックス アーバンボックス113L


画像提供/ハンワホームズ

木目調がモダンでおしゃれな大容量ボックス。景観を損なわないので、収納以外にそのままテーブルやチェアーとしても使えます。お手入れしやすいUV耐候性樹脂製なので、丸ごと水洗いができます。

販売価格:7,480円(税込)サイズ:幅約59.6×奥行約46×高さ約53cm
材質:ポリプロピレン
https://item.rakuten.co.jp/keterjapan/4573405815754/

■無印良品 ポリプロピレン頑丈収納ボックス・小


画像提供/良品計画

フタをしたまま、簡易なチェアとして座ることができる頑丈な収納ボックスです。運びやすい持ち手付なので、車に運んだり、屋外に持ち出して使いやすいのも魅力です。サイズは、小・大・特大があり、小と大は最大3段まで、特大は最大2段まで積み重ねることができます。ちなみに大サイズは、幅約60.5×奥行約39×高さ約37cm、特大サイズは、幅約78×奥行約39×高さ約37 cmです。


販売価格:1,290円(税込) サイズ(小):幅約40.5×奥行約39×高さ約37cm
材質:ポリプロピレン
https://www.muji.com/jp/ja/store/cmdty/detail/4550002478834

ベランダの大きさや、収納したい物から選ぶと良いでしょう。テーブルやチェアにも使えるボックスなら、ベランダ時間を楽しむきっかけにも繋がりそうですね。


日本は台風や地震が多く、それらの災害に備えることは必須とされています。さらに新型コロナウイルスに伴う新しい生活様式をする中で、気づかぬうちに不安やストレスが大きくなっています。

「次のパンデミックはいつ生じてもおかしくありませんが、備蓄に力を入れすぎると息切れしてしまいます。日常備蓄などを活用して、いつか食べるものを先に買うという意識で、備蓄のためにお金と労力をかけないようにしましょう」と高荷さんが言うように、備蓄のために必要以上に力まぬようにしたいものです。


参照:
農林水産省「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド」
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/gaido-kinkyu.html
備える.jp
https://sonaeru.jp/



<監修>

高荷智也
備え・防災アドバイザー。ソナエルワークス代表、BCP策定アドバイザー
「自分と家族が死なないための防災」と「企業の実践的BCP策定」をテーマに活動するフリーの専門家。大地震や感染症パンデミックなどの自然災害から、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝える活動に従事。著書に『緊急事態宣言対応 最善最強の防災ガイドブック (COSMIC MOOK)』『中小企業のためのBCP策定パーフェクトガイド(Nanaブックス)』など。
https://sonaeru.jp/


photo: Getty Images


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