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家庭円満&大掃除もスムーズに進む 家事シェアを上手に取り入れるコツ

(2020.12.18)

これまでは、家事の負担を減らす観点で提唱されがちだった「家事シェア」。実は「家庭円満のカギ」になることもあるそう。今回は、年末に役立つ大掃除を事例に、上手な家事シェアの取り入れ方や、家族みんなが暮らしやすくなる家事シェアのコツについて、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事の村上誠さんに教えていただきました。

(※この取材はオンライン会議ツールを使用し、リモートでインタビューしたものです)

家事シェアとは?
男女平等が謳われ、夫婦共働きの家庭が増えた現代日本社会、「イクメン」という言葉が生まれて10年以上経ち、家事や育児に積極的に関わろうとする父親が増えました。また、コロナ禍の影響で、家で過ごす時間が多くなった社会的背景もあり、従来の「性別役割分業」から、家事を個人ごとに「分担」する、さらに家事の総量や内容をみんなが把握して共通認識を図る「シェア」という意識が注目されてきていると、村上さんは語ります。

「例えば、一言で‟洗濯”と言っても、洗濯物を色物や汚れ物に分類する、洗濯機を回す、洗濯物を干す、取り込む、畳む、収納する……など、発生する作業はさまざま。『洗濯は夫、掃除は妻』などと大まかに分担してしまうと、担当以外の家事を‟他人事”として扱ってしまいがちです。家事の細かい作業内容、それぞれの好き嫌いや得意不得意、家族のスケジュールなどをすべて‟自分事”として共有し、みんなで対応していくのが、家事シェアのイメージです」。

家事シェアは決められたルールなどはなく、家庭ごとに取り組みやすい仕組みを作っていけばいいので、どのような家族にも有効な考え方だそうです。

家事シェアのメリット
「うまく家事シェアができれば、個人の家事のストレスや負担が減り、家庭円満のカギになりますよ」と話す村上さん。

「実際に私の周囲でも、家事シェアを取り入れたことで、『家事スキルが身についた』『夫婦の会話が増えた』『家族の忙しさや家事の負担などについて配慮できるようになった』……など、好ましい変化を得られた家庭がたくさんありました。また、家事シェアをしたことで、家事の中には、それまで意識していなかったこまごまとした作業、いわゆる「名もなき家事」がたくさんあることを知って、『家のために、そんなことまでやってくれていたんだ』と、相手に感謝するようになったという人たちもいます」。

家族みんなが家事の内容や、やり方を把握していると、誰かの体調不良などの緊急時にも、家事が滞ってしまうことを防げます。

「特に、核家族や祖父母と遠く離れて暮らしている家庭では家事の助けを得るのも難しいため、家族みんながそれぞれ家事をこなせることは大きなプラスになるでしょう」。

また、村上さんいわく、家事シェアは子どもの情操教育につながることも期待できるとのこと。

「家事は生活に直結するものですから、子どもが家事をこなせるようになると、生活力がつき、自主性や自立心につながります。大人になったときに家事で困らないよう、親子で一緒にやって覚えてもらうといいでしょう。そうすると、小さな子どもも数年経てば立派に家事をこなせるように成長してくれるはず」。

「さらに、家事シェアは作業のシェアだけでなく、『家族が暮らしやすい環境を作る』という目標や、『誰かが忙しいときは支え合おう』『誰かが困っているときは助け合おう』という意識のシェアでもあります。人と協力し合う意識や感覚を子どもの頃から身につけておくと、学校や部活などでチームの一員として目標達成を目指す際にも、大いに役立つはずですよ」。


上手に家事シェアをするコツは?

たくさんのメリットがある家事シェア。実践したいけれど、どういうふうに取り入れればいいのか悩みどころ……という家庭もあるでしょう。上手に家事をシェアするためのいろいろなコツや秘訣は? 村上さんに教えていただきました。

・家族でスケジュールを常に共有する
「仕事や育児関連のスケジュールはカレンダーアプリなどで共有。スケジュールがわかりやすく、家事シェアの相談もスムーズになります」。

・「名もなき家事」の洗い出しやリストアップ
「‟掃除”‟洗濯”のように具体的な名称がなく、見落としがちだけど必要な家事のことを‟名もなき家事”といいます。これが無意識のうちに家族の誰か一人に偏るとストレスや不公平感が蓄積されてしまいます。まずはリストアップして全体量をシェアしましょう」。

・「パラレル家事」に挑戦する
「‟パラレル家事”は、家族がそれぞれ同時進行で違う家事を進めること。脳科学の観点では、男性は目的達成を求める‟目的脳”、女性は共感を求める‟共感脳”といわれています。例えば、男性は食後に一休みしてから片付けをしようなどと頭の中で段取りを考えて自分のペースでやりたい。一方で女性は自分が家事をやっているときに、他の家族がボーッとしていたりすると、それがストレスになりやすいようです。二人とも同じタイミングで家事に取り組む時間を作ることで、女性の不満が軽減され、作業効率もアップ。一緒に家事をする時間が、夫婦間のコミュニケーションにもなります」。

・家事のやり方を共通化・標準化する
「夫と妻とでは、家事に対する知識量やスキル、こだわりが違うことが多いです。家事の手順をシンプルにし、手順や頻度、使う道具などを二人で標準化し、共有しておきましょう。
収納場所や容器に入れるものの名前をラベリングしておくと、サッと見つけられて、ストック管理も簡単。子どもにもわかりやすく、片付けやすくなりますよ」。

・ルールをきっちり決めすぎない
「その日の家事の総量や、家族ごとの忙しさは毎日変わります。そのため、家事シェアのルールを厳密に決めすぎると、それがプレッシャーになったり、相手がルールを守ってくれないことにイライラしたり……。すべてに細かいルールを決めるのではなく、スポーツのダブルスのようなイメージで、状況に応じて自由に動けるて互いを補い合える体制を作っておくこともポイントです」。

・家事シェアの担当を決める際は‟気持ち”を優先する
「家事の量や時間の分担量で分けるのではなく、負担感や不満感といった本人の‟気持ち”をベースに考えて、好き嫌いや適性を重視しましょう。家族みんなが苦手な家事は、便利家電や外部サービスに頼るのもいいと思います」。

・マンネリ化しない工夫を取り入れる
「家事シェアに取り組んでいても日々の家事を繰り返していると、相手がやってくれることが当たり前になってしまうこともあります。それを防ぐには、意識的に感謝の気持ちを言葉にすること。また家族がそれぞれずっと同じ家事を担当しているなら、たまに家事を入れ替えてみることで、刺激になるでしょう」。

このほか、お互いの妥協点を見つけるため、全部をオープンに、風通しよく話し合うなど、コミュニケーションすることも大事だという村上さん。コミュニケーションについても、うまく気持ちをシェアするためのコツがあるようです。

「家族が家事をしてくれたけれど、直してほしい部分がある場合は、相手を批判せず伝えること。感情的に怒ったり、命令口調で指示したりすると、相手の気分を害してしまいます。英語の‟I=アイ(私)”を主語にして話す‟アイ・メッセージ”も、円滑なコミュニケーションに役立つとされています。『こんなふうにしてもらえると、私は助かる』というような表現を使うと、要求や命令のニュアンスが和らぎますよ」。


大掃除は家事シェアを取り入れるタイミング

日常生活にもメリットが多い家事シェアですが、年末の大掃除に取り入れることで、効率的に掃除が進められるそうです。大掃除での家事シェアのポイントをうかがいました。

「大掃除の場合、まずは『どの場所を、どのくらい、いつまでに掃除するのか』という目標やスケジュールを、家族みんなですり合わせて共有しましょう。それを決めたら、細かくリストアップし、確認しやすくすることで『ここは掃除したっけ?』などといったすれ違いを防げます」。

大掃除の時間が足りない、汚れがひどくて掃除が難しい場合は、どうすればいいのでしょうか?

「そういう場合は、無理せず家事代行サービスなどにお願いすることを検討してもいいでしょう。近年は家事代行サービスのお試し制度なども充実しており、上手にアウトソーシングを活用することも、家事シェアの1つのテクニックです。選択肢に入れてみてはいかがでしょうか」。

掃除の場所はいつもより多いものの、目標や手順、スケジュールなどを家族で明確に共有するという工程は、日常の家事シェアと変わらないはず。普段から家事シェアを心がけていれば、大掃除でもスムーズにこなせるに違いありません。

村上さんは、「スケジュールに余裕があるなら、大掃除から家事シェアを取り入れてみて、今後の家事シェアを家族でスムーズにこなすきっかけにするのもいいと思います」と提案してくれました。

家事シェアのタイミングはさまざまですが、出産や子どもの成長をきっかけに、家事シェアを取り入れるケースも多いのだとか。近年の傾向として「とくに高齢者夫婦の家事シェアも注目されています」と村上さん。

「夫が仕事に専念し、妻が家事をしてきた場合、夫は家事ができないことが多いです。しかし、将来妻が急病にかかることもあるかもしれません。そんな事態を想定して夫婦で家事シェアに取り組んでおくと安心です。これまで家事をやってこなかったからこそ、新鮮な気持ちを味わえ楽しく取り組めるという男性は意外に多いようです。しかし、どうしても家事に抵抗や苦手意識がある場合は、便利家電などを導入してもいいでしょう。無理せず、できるところから家事シェアを取り入れてみては?」


村上さんがアドバイスしてくれたのは、家事シェアは単なる作業のシェアではなく、夫婦や家族の生き方・暮らし方のシェアと言っても過言ではないということ。どんな家庭像や将来をお互いが理想としているのか、家族で向き合ってコミュニケーションを取ることが大切です。相手の意見もしっかり聞いたうえで、みんなが「自分事」として気持ちよく家事シェアに取り組めれば、家庭円満と暮らしやすさの向上につながるでしょう。
大掃除にも家事シェアを取り入れて、一年の汚れを効率的に綺麗にするだけでなく、新年に向けての家族のコミュニケーションにも役立ててみてはいかがでしょうか。

<取材・監修>

村上誠
NPO法人ファザーリング・ジャパン理事/NPO法人孫育て・ニッポン 理事/秘密結社 主夫の友 総統
1971年千葉県市川市生まれ。市川市在住。東京理科大学理工学部建築学科卒。グラフィックデザイナー/兼業主夫。実母の介護を機に自身のワーク・ライフ(家事、育児、祖父母のケア)バランスを見直し、妻の産後職場復帰・両立・キャリア支援のためにも兼業主夫となる。2015年に主夫仲間と「秘密結社主夫の友」を結成、「主夫=主体的に家事育児に携わる男性」と定義し、男性の育児家事の浸透と女性活躍の推進、夫婦の多様性を目指して、総統として活動中。父親の育児家事、夫婦のパートナーシップ、地域で子育て、孫育てなど幅広い家族・育児テーマを取り扱い全国で講演し、絵本読み聞かせ、工作ワークショップ、からだあそび、料理教室など親子向けイベントも行っている。
https://fathering.jp/index.html


photo: Getty Images


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