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体にあう椅子の選び方とライフスタイルの変化にあわせた家具のカスタマイズ方法

(2021.8.20)

ステイホームが長期化する中で、今まで気にしなかった家具についてあれこれ気付くようになったのではないでしょうか。中でも使用する時間が長い椅子は、デザイン性だけではなく体のことを考えて選ぶ視点が大切です。

さらに、愛着を持って使い続けられる家具があれば、生活に安らぎや潤いを感じることができます。暮らしや体にあう家具がない、というときはセミオーダーを活用するのもおすすめ。一級建築士の水越美枝子さんによる、将来を見据え、機能性と美しさを兼ね揃えた家具選びのコツを紹介します。


椅子は座る人の健康をも左右する
コロナ禍で外出の機会が減った昨今。ダイニングチェアやソファに座り、日中のほとんどの時間を過ごしているという方も多いのではないでしょうか。在宅勤務をする方にじわじわ増えているのが、首や肩こり、腰痛といった体の不調。体を動かす時間が減っていることに加え、ご家庭にある椅子が体にフィットしていないこともトラブルを招く原因の一つと考えられます。

椅子は、家具の中でも「特別な存在」で、体にあっているかどうかはとても重要です。水越さんによれば、椅子は体を直接支えるので、座る人の健康をも左右することがあるほど重要で、実は機能性と美しさの究極を求められるインテリアとのこと。

食事をしたりお茶を飲むなど、短時間の利用なら負担を感じることがなくても、仕事をしたり本を読んだりと長時間座り続けるには、体にあうサイズであることが何より大切だそう。

背板が体にそってラウンドしている椅子は、体にフィットするため、長時間座っても疲れません。しかし、例えばサイズが大きくて、足が床につかずブラブラするという椅子の場合、太腿が圧迫され血流が悪くなる原因になることがあるのだとか。

ご家庭で使っているダイニングチェアやパソコンチェアが、つま先だけでなくかかとまでちゃんと床に着き、膝から下の体重がかかとにしっかり乗ることができるか、一度チェックしてみましょう。


日本人にフィットする家具の理想のサイズ

椅子の高さがちょうど良くても、テーブルの高さがあっていないと姿勢が悪くなり首や腰に負担がかかります。椅子とテーブル、それぞれの高さをセットで確認することが大切です。

<ダイニングセットの理想的なサイズ>

椅子の高さがあっていない場合は、工務店や家具メーカーでも脚をカットしてもらえます。また、家具メーカーでは座面の貼り直しをしてくれるところもあります。

椅子の高さを変える場合は、テーブルとのサイズも考慮するとより使いやすくなります。欧米の家具と日本の家具では理想的なサイズが異なります。それは、身体的な違いもありますが、欧米スタイルの食事は少しかがみ込む感じに対して、和食は基本的には背中をまっすぐにして食べるという食生活の違いによるところもあります。ライフスタイルや身長をもとに、心地良いバランスを見つけてください。

また、リビングにソファを置いているご家庭が多いのではないでしょうか。ソファも椅子と同じように、疲れにくいサイズがあります。

横になる時にはソファの奥行きが深い方がゆったりくつろげますが、奥行きが深い座面は座った時に背中と足がつかず安定しない場合も多いので、そんな時はクッションをいくつか使って奥行きを調整します。また、ソファの座面は深く沈みこまない方が、腰掛けたり立ち上がる時に腰の負担が少なくなります。

<ソファの理想的なサイズ>

椅子やソファに座って心地良いと感じるのは、サイズがフィットしていることに加え、座面の固さや生地のさわり心地などが自分の好みにあう時。家具はネットで購入することもできますが、できれば実際に見て座って選ぶことをおすすめします。


ライフスタイルの変化にあわせて選ぶ家具も変えていく

コロナ禍の新しい生活様式により、日中は家にいなかった家族が一緒にいるようになり窮屈に感じることがあるかもしれません。

この感覚は、会社を退職した後や子どもが巣立った後など、夫婦2人で過ごす時間が長くなった時にもやってきます。お互いにつかずはなれずの距離感を保てるように、年齢によるライフスタイルの変化とともに家具を配置することは、円満な暮らしを送る秘訣にもなります。

例えば、リビングにはソファを置くものと思っていませんか? しかし、夫婦2人だけならソファよりもパーソナルチェアのほうが落ち着けます。オットマンもあわせて置けば、足を伸ばしてくつろげるなど、ソファよりも快適になることも。ライフスタイルが変化することでソファが不要になることもあるのです。

実際、ソファは年齢や体の具合によっては、立ち上がる時に足腰に負担がかかってしまうというシニアの悩みにつながることもあります。年齢とともに将来のことを考えるならパーソナルチェアを取り入れてみるのもいいかもしれません。パーソナルチェアは、すっぽりと体を包み込んでくれるものが多く、リビングにいても一人の空間を楽しめます。背もたれが倒れるリクライニングチェアや椅子が揺れるロッキングチェアなどがあり、長時間座っていても疲れないものも多いです。自分にあったものを選ぶとよいでしょう。
ソファを取り除くことで、リビングなどのスペースが広がり、物につまずいて転ぶなどのトラブル防止にもなります。

また、夫婦2人だけになった場合「大きなダイニングテーブルと椅子を置くのもひとつの手」と水越さんは提案しています。
リビングという住まいのパブリックスペースに、休日や退職後、夫婦が長時間いっしょにいても気にならないためには、ある程度、空間の広さが必要です。大きなテーブルなら、それぞれの個室がない場合でも、はす向かいに座ればリビングにいながら思い思いのことができます。お互いの気配を感じながら、それぞれのやりたいことを尊重できるゆとりが理想です。


ジャストサイズの家具が見つからない時は
ジャストサイズの家具が見つからない、「デザインが気に入っているからサイズがあわないまま使っている」という悩みは既製品の家具にありがちです。でも、使いにくい…と思ったらどうすればいいのでしょうか。

おすすめは、家具を自分の生活にあわせること。オーダー家具のようなイメージですが、オーダーするとなると「高価」「やりとりが面倒」と考える方もいるでしょう。しかし、先に紹介したように、椅子の脚のカットなど、ちょっと使い勝手を良くするために少し工夫を取り入れる「セミオーダー品」ならそれほどハードルが高くありません。
セミオーダーを希望する場合は、購入したい家具のメーカーやショールームに希望を聞いてくれるか問い合わせてみましょう。

また、手持ちの家具をより使いやすくするために、取っ手やガラスを変更したり、引き出しの中に仕切りを入れ棚を増やすなど、少し工夫をするだけで使いやすさが高まります。水越さんご自身も手持ちの家具を使いやすいようにカスタマイズしているそうです。

海外から帰るときにオーダーで作ったダイニングテーブルには、子どもが小さい時に、勉強道具やおもちゃがさっと片付けられるように、テーブルの下に収納スペースを設けました。子どもが成長した今は、雑誌や文房具のスペアなどを収納しています。

水越さんの父親が本箱として使っていたアンティークの素敵なキャビネットは、取っ手を変更し、CDを収納しやすいサイズに棚板を入れ直したそうです。

思い出がこもった家具を自己流にカスタマイズすることで、使いやすくなったばかりでなく、いつも目にする場所に置くことで、父親の存在を感じる唯一無二の家具となりました。


家にいる時間が増えている今だからこそ、家具にじっくり目を向けることができます。すべての家具を見直すのは大変ですが、まずは、自分の体にあう椅子を探すことから始めてみませんか。
それから少しずつライフスタイルにフィットするような家具を選んだり、カスタマイズしてみてはいかがでしょうか。好きな物、心地良い物に囲まれる生活は、体だけでなく心も健やかにしてくれるはずです。


<監修>

水越美枝子
一級建築士。キッチンスペシャリスト。日本女子大学住居学科卒業。建設会社で、商業施設、マンション等の設計業務に携わり、現在は一級建築士事務所アトリエサラを共同主宰、建築設計、インテリアコーディネイトなど、トータルで住まい作りを提案している。日本女子大学非常勤講師、NHK文化センター講師。『いつまでも美しく暮らす収納のルール』、『美しく暮らす住まいの条件』(エクスナレッジ)など著書多数。
https://salamizukoshi.blog.fc2.com/

画像提供:一級建築士事務所アトリエサラ 撮影/永野佳世

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