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気象を知って備えたい 気象予報士・防災士に聞くマンションライフを守る安全・安心の対策

(2022.6.24)

ゲリラ豪雨と呼ばれる「局地的な大雨」や35℃を超える「猛暑日」などの気象現象を耳にすることが多い今日この頃。大雨や台風による被害はいつ自分の身に降りかかるかわかりません。日頃からハザードマップでマンション周辺にどんな災害が起こりうるかをチェックしたり、気象情報を確認して自分の身を守る対策をすることが大切です。今回は、大雨、台風、地震などの気象や災害がマンションにどのように影響するのか、どのように備えればよいのか、気象予報士で防災士でもある斉田季実治さんにお聞きしました。


最近の気象の傾向、異常気象は増加しているの?
異常気象を伝えるニュースが増えていますが、異常気象は、高温(熱波)、低温(寒波)、大雨、少雨、豪雪、少雪、日照時間、台風などで、いつもの年と比べて大きく外れた現象のことを言います。気象庁が毎年公表する「気候変動監視レポート」によると、2021年の日本の天候・異常気象として高温や豪雪、大雨が報告されています。

例えば、

・気温の高い状態が続き、年平均気温は全国的に高く、とくに北・西日本ではかなり高かった。
・前年 12 月~1月にかけて、日本海側では各地で大雪となった。
・8 月中旬は東・西日本で記録的な大雨となった。

気象庁では、気温や降水量などの決まった値ではなく「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節等)において30 年間に1 回以下の出現率で発生する現象」を異常気象としています。そのため、異常気象の判断基準上、全国的に見れば一年に何度か異常気象があってもおかしくはない、と斉田さん。

また、地球温暖化の影響で気温のベースが上がり、大気中に含むことができる水蒸気の量が増えているため、大雨が降りやすい傾向も。

大雨による災害は「洪水」「浸水」「土砂災害」がありますが、近年では「都市型水害」と呼ばれる都市部の排水能力を超える大雨により、交通渋滞や停電など都市機能が麻痺する災害が発生しています。局地的な大雨による「都市型水害」は、いつ起きてもおかしくない状況にあることを知っておきましょう。


マンションで異常気象に備えるポイント

大雨が引き起こす水害や土砂災害などの自然災害は突発的に起きるので、事前に対策をしておくことがとても大切です。住んでいるマンションが水害や土砂災害が起きやすい地域にあるかどうかは、市町村が作成するハザードマップで確認できます。万が一に備えて、日頃から避難する場所や安全な経路を家族でチェックしておくと安心ですね。

また、台風が接近しそうな時は、強風に備えるためにベランダに置いてある飛ばされやすいものは固定するか室内に入れます。懐中電灯やスマートフォンのモバイルバッテリーを準備する、食料や生活必需品をストックすることも大切です。

マンションの場合、住居がある階数によって被害が異なります。大雨や台風が発生した場合どのようなことに注意しておくべきなのでしょうか。

<低層階・駐車場>
大雨による浸水や川の氾濫で水に浸かる可能性がある。ハザードマップで想定される水の深さを確認し、危険な場合は早めの避難や車の移動が必要になる。

<高層階>
浸水のリスクはないため、台風や大雨の際も自宅に留まる「在宅避難」が可能。7日間(最低3日)は自宅で生活できるように、各家庭で水(1人1日3リットル)・食料・生活必需品などを用意。風は強くなりやすいので、万が一、窓ガラスが割れたときにケガをしないように、カーテンを閉めて窓からはできるだけ離れて生活する。

<共通>
ベランダの物が落下したり、窓ガラスが割れることを防ぐために、物干し竿は飛ばされないように降ろす。植木鉢などの飛ばされそうなものは屋内にしまう。外にある自転車は固定する。またライフラインが止まった際にも対応できるように、風呂の残り湯は生活用水として使用できるよう貯めておく。簡易トイレやカセットコンロのボンベは多めに用意しておく。

その他、高層マンションでは、停電により一時的にエレベーターがストップすることも考えられます。高層難民となったり、オートロックの自動ドアが作動しなくなることがあります。そのようなことも想定し、対処法をイメージトレーニングしておくといざという時に慌てません。停電になった場合、いつもは明るい廊下や住戸内が暗いだけで不安になるものです。些細なことですが、必要な場所に懐中電灯などを置いておくことも安心につながります。


段階的に情報を知り、対応する行動を心掛ける
今や、科学技術の進歩やスマートフォンの普及により、最新の気象情報や防災情報を確認して、万が一に備えられます。早い段階から危機意識を共有し、災害に備えられる情報として斉田さんが勧めるのは、気象庁の「早期注意情報」。これは、警報級の大雨や暴風が5日先までに予想されているときに、その可能性を「高」「中」の2段階で発表するもの。

「災害が起こるおそれがあるときは、3日〜1日前から大雨や暴風に関する気象情報が発表され、予想雨量や予想される最大風速などが示されます。実際に雨が強まってくれば、

大雨注意報→大雨警報→土砂災害警戒情報、氾濫危険情報→特別警報

が、発表されます。防災気象情報は段階的に発表されるため、それに合わせてどのような行動を取るべきか、あらかじめ決めておくことが大事です」

例えば、台風が発生し、早期注意情報で5〜3日後に警報級の大雨の可能性があると予想された段階で、「家族の予定を確認」「避難する際に持っていく物を準備」します。その後、台風が接近して雨が強まってきたら、警戒レベルを確認し、「高齢者等避難」「避難指示」というように発表される情報に応じて行動します。
このような取るべき行動をまとめた「マイ・タイムライン」を作成しておくと、いざという時に落ち着いて行動できます。




地震は異常気象と関係がある?
災害といえば、ここ日本では地震も想定しておきたいもの。世界で起きるマグニチュード5.0以上の地震の約10%は日本とその周辺に集中しているといわれ、日本は地震から逃れることはできない場所にあります。それにしても最近、地震が頻発しているように感じている人は少なくないのでは? 異常気象との関係が話題になることもありますが、地震と気象の直接的な関係は不明だそうです。

また、地震の前に地震雲が出ると言われることがありますが、斉田さんによれば、地震雲と言われている雲は気象現象で説明できる雲であるため「地震の前兆として判断することはできない」とのこと。

地震に備えるためには、いつ地震が起きても大丈夫なように備えをしておくことが今のところの最善策。備えとして飲料水、食料品、携帯トイレなどをイメージするかもしれませんが、これらは「命が助かってから必要になるもので、地震から命を守るためには事前の確認が大切」。防災士でもある斉田さんが具体的な備えとしてアドバイスするのは下記のことです。

①自宅の安全対策を徹底
 耐震診断・耐震化・家具の転倒防止、電気火災を防ぐ感震ブレーカーの設置など
②家族が集まる場所を「学校の正門前」のように具体的に決める
③危険な場所と安全な場所の確認
 屋内で危険(倒れるものが多いリビングなど)安全(窓や家具がない玄関など)
 屋外で危険(ブロック塀のそばなど)安全(広い公園など)
④家族の連絡手段を決める
災害伝言ダイヤル「171」「ソーシャルメディア」「三角連絡法(離れた地域の人)」
⑤「非常持出品」と「備蓄品」の準備
 貴重品(現金、印鑑、権利証書など)、最低3日(7日)分の飲料水・食料品・携帯トイレ、防災グッズ(寝室に懐中電灯・スリッパ・笛)

大雨や台風と違い、地震の予知は難しく、在宅時に遭遇するとは限りません。通勤経路、旅行先などさまざまなケースを想定して、どう行動するかをシミュレートしておくことが大切ですね。


知っておくと安心な気象情報・防災情報サイト

自分が住む場所の災害の危険度を確認したり、自主的な避難の判断に活用したりできる情報として、気象予報士も利用しているウェブサイトが気象庁の「キキクル(危険度分布)」。土砂災害、浸水害、洪水害という3つの災害の危険度を5段階で地図上に色分けして表示されたものです。ネット環境さえあれば誰でもリアタイムで見ることができ、10分ごとに更新されます。

「危険度分布は、雨量の予測を災害の予測に翻訳したもので極めて有効です。土砂災害は、それまでに降った雨が土壌に残るため、影響が長引く。浸水害は、局地的に降る短時間の大雨で発生するため、低地を避ける。洪水害は、下流の離れた所も時間差で危険になるため、雨がやんでも油断してはいけない。といった特徴があり、そのことを踏まえて危険度が表されています」

警戒レベル3は、高齢者や避難に時間がかかる方が避難、警戒レベル4で危険な場所から全員避難といったように取るべき行動がわかります。避難に関しては「避難勧告があったら」と思っている方がいるかもしれませんが、避難勧告は廃止され、令和3年5月から警戒レベル4は「避難指示」に一本化されました。警戒レベル5は既に災害が発生・切迫して命に危険がある状態のため、警戒レベル4までに避難することが必要です。「キキクル」の警戒レベル4に相当する危険度の高まりを、プッシュ通知でスマホに知らせてくれるサービスもあります。一度ご自身の端末で確認してみましょう。

ところで、最新情報だけではなく、空の様子や風の流れで異常を察知することはできるのでしょうか?

「局地的な大雨や竜巻、雹は、同じ発達した積乱雲で発生します。天気予報で『大気の状態が不安定』というワードが使われているときは、天気が急変し、積乱雲が発生するおそれがあります。外に出る際は、空もようの変化に注意が必要です」

斉田さんが、積乱雲が近づいているサインとあげてくれたのは次の3つ。
①真っ黒い雲が近づいてきた
②雷の音が聞こえてきた
③急に冷たい風が吹いてきた

これらの兆しがあったときには、急いで建物や車の中に入りましょう。木の下での雨宿りは、落雷のおそれがあるので絶対にダメです。また竜巻注意情報が発表されているときは、鉄筋コンクリート製の頑丈な建物の中に避難してください。

キキクル
https://www.jma.go.jp/bosai/risk/#lat:33.961586/lon:142.558594/zoom:5/colordepth:normal/elements:flood
※2022年6月30日からキキクルの色味が変更。警戒レベル5相当として「黒」が新設されます。
(参考:https://www.jma.go.jp/jma/press/2205/18a/02_betten.pdf)

テレビやアプリの気象情報をチェックする方は多いと思いますが、情報の意味を知って活用することで、早い段階で災害の危険性を知り対策することができます。今回は、マンションライフを守るポイントも紹介しましたが、生活基盤ともなるマンションがある場所にどんな災害(土砂災害、浸水害、洪水害など)の危険があるのかハザードマップなどで調べる、万が一に備えて家族間で避難する場所を決める、といったことからスタートするのもよいでしょう。斉田さんは「その上で、防災気象情報を活用してほしい。災害はいつか必ず起こるもの。運に任せず、未来に備えることを意識して欲しい」と、主体的に情報を活用して自分の身を守る大切さを訴えています。


参考:
「新・いのちを守る気象情報」斉田季実治(NHK出版新書)

<監修>

気象予報士・防災士・危機管理士1級 斉田季実治
北海道大学で海洋気象学を専攻し、在学中に気象予報士資格を取得。2006年からNHKで気象キャスターを務め、現在は「ニュースウオッチ9」に出演。連続テレビ小説「おかえりモネ」の気象考証を担当した。2018年に株式会社ヒンメル・コンサルティングを設立し、代表取締役を務める。防災には家族の話し合いが必要と考え、未来を見据えて行動するスキルを伝えている。
Twitter: @tenki_saita
株式会社ヒンメル・コンサルティング https://tenki-saita.com

画像:Getty Images

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