(2019.1.24)
椅子は一脚何千円のものから、何十万円もするものがあります。この価格の違いはどこからくるのでしょう。椅子やテーブルなど生活のために家の中に備える家具は、身近で毎日使うものだからこそ、その人のこだわりやセンスが反映されます。
世界中で愛される名作の椅子や照明を紹介し、高級家具の魅力に迫ります。
高級家具は何が違うのか？
高級家具で長く愛されている名作に共通するのが、道具としての機能性に加えて、優美なラインやバランスを備えていることです。華美ではないミニマルなスタイルなのに完成されている……それが名作と称されるものの特徴です。
家具デザイナーであり、インテリア用品のセレクトショップ「ザ・コンランショップ」を展開するテレンス・コンラン氏は、著書の中で、リビングに求められるのは「身体と視覚の両面での心地よさ」としています。
“身体を優しく支えてくれる椅子やソファーを置き、照明の明るさを調整し、視線を引きつけるポイントとなるものを置くとよいでしょう”
−『テレンス・コンラン流 インテリアの基本』より−
ロングセラーの名作椅子
単に座る道具ではなく、名品が醸し出す空気感を配置する。「余裕」「人生を楽しむ」というライフスタイルには、必ずと言ってよいほど名作椅子が存在しています。
『なぜデンマーク人は初任給でイスを買うのか?』というタイトルの書籍があります。デザインを愛するデンマーク人は、椅子を「時間とお金をかけるべき大切な場所」と考えているそうです。
確かに、椅子は食事や本を読むときなど、家具の中でも身体が接している時間が長いです。そんな椅子を単なる家具と考えずに、こだわりの逸品を選ぶことで、暮らし方が変わってくるのもわかる気がしますね。
では、名作椅子をいくつかご紹介しましょう。
デンマークのデザイナーが生んだ椅子で、「世界一美しい椅子」と称されるのは「Wishbone Chair（ウィッシュボーンチェア）」。1950年発売のこの椅子は、完成度の高いフォルムが醸し出す美しい佇まいが人気で、背もたれの板がY字になっていることから「Yチェア」とも呼ばれています。機械生産することで廉価での量産が可能になり、世界中で愛される椅子となっています。
・Wishbone Chair / Hans J. Wegner
https://www.shop.carlhansen.jp/
（参考価格）90,720円〜 / カール・ハンセン＆サン
また、「LC4 シェーズロング」は、建築家ル・コルビュジエが「休養のための機械」と呼んだ個性的なデザインの寝椅子。人体の曲線に沿うカーブをH字形の台座が支えます。弓形のパイプをずらすことで、寝る角度を自由に変えられるようになっています。
・LC4 Chaise Longue / Le Corbusier
http://www.cassina-ixc.jp/shop/g/glc4/
（参考価格）570,000円〜／カッシーナ・イクシーズ
次に紹介するのは、北欧デンマークのデザイナー、ポール・ケアホルムの「PK22」。ドイツ人デザイナー、ミース・ファン・デル・ローエがデザインした「バルセロナチェア」から影響を受けていることがうかがえます。座り心地を追求したクラフトマンなデザインで、1957 年ミラノ・トリエンナーレ（ミラノで開催される美術展覧会）でグランプリを受賞しています。
・PK22 / Poul Kjrholm
https://fritzhansen.com/ja-jp/pk22
（参考価格）480,600円〜 / フリッツ・ハンセン
「The Egg」は、北欧デザインを代表するデザイナーであるアルネ・ヤコブセンが、コペンハーゲンの高級ホテルを設計した際にデザインしたラウンジチェアです。優しく身体を包み込むシェルは、心地よいプライベート空間を作り出します。
・The Egg / Arne Jacobsen
https://fritzhansen.com/ja-jp/products/lounge-chairs/3316_egg_leather
（参考価格）702,000円〜／フリッツ・ハンセン
これらの椅子は、座る喜びはもちろん、デザインとして完成された視覚的な喜びを兼ね揃えています。
一流デザイナーによる照明の素晴らしさ
部屋の印象に影響を与える照明。たとえば、電球ひとつとっても、暖色か寒色かの違いで部屋や家具の雰囲気もだいぶ変わります。機能的に照らすだけではなく、照明そのものが美しい有名デザイナーによる名品があります。
デンマークの照明デザイナーのポール・ヘニングセンの「PH Artichoke（ピーエイチ アーティチョーク）」は世界中で愛されているペンダント照明です。中央の光源の光が72枚のシェードすべてに当たり、シャンデリアと同じような光を演出します。
・PH Artichoke / Poul Henningsen
https://www.louispoulsen.com/jp
（参考価格）864,432円〜 / ルイスポールセン ジャパン
イタリアの照明デザイナーのジノ・サルファッティの「2097」は、伝統的なシャンデリアを抽象化し、スチールパイプをフレームにし、むきだしの電球を幾何学的に配置した画期的な商品を生み出しました。
・2097 / Gino Sarfatti
http://japan.flos.com/highlights/209730-matt-black
（参考価格）264,297円〜 / 日本フロス
フィリップ・スタルクはフランスのデザイナー。3本の脚部の交点に、カーテンのような白いテキスタイルのシェードがある「Rosy Angelis（ロジーアンジェリス）」は、ミニマルな洗練されたデザインで、部屋をエレガントにするフロアランプです。
・Rosy Angelis / Philippe Starck
http://japan.flos.com/archives/consumer/rosy-angelis
（参考価格）86,400円〜 / 日本フロス
高級家具を扱うときの注意点は？
せっかく出会った一品だから長く大事に使いたいもの。高級家具を扱う際のポイントをまとめました。
【素材に合わせた手入れ方法を購入時に確認する】
長く使うためにはどのような手入れが適切なのか、汚れてしまった場合の適切な処置など、購入時に確認するようにしましょう。
【アフターサービスの有無を確認する】
椅子の場合、座面のファブリック張替やパーツ交換など、メーカーが一定期間修理を保証してくれているのか確認を。また、照明の場合も、接触不良や破損の際どのような対応が可能なのか、事前に知っておくと安心でしょう。
高級家具の価値とは？
最後に、一級建築士・住宅リフォームコンサルタントとして、住宅リフォームの現場やインテリア、設計、工事にかかわってきたYuuこと尾間紫先生に、高級家具の魅力をお聞きしました。
「高品質な家具は暮らしの質を高めてくれます。便利や快適はもちろんのこと、心を豊かにしてくれたり身体を癒やしてくれることもあります。眺めているだけで幸せな気持ちになることもあるでしょう。
高級家具の価値とは、技術と伝統に裏打ちされ、優れた感性を持つデザイナーが作り上げた精神世界を体現する芸術作品です。ゴッホの絵画を持つ喜び、ロダンの彫刻を愛でる喜びが、部屋に置かれたひとつの家具から感じられるのです。
本物の家具のある質の高い暮らし、素晴らしい家具に出会っていただければと思います。」
高級家具は、心を豊かにしてくれる芸術作品。そう考えれば、長く愛され高価になるのもわかります。そんな椅子や照明を自分の目でみて、触れて、名品と言われる理由を確かめることができる店舗をいくつかご紹介します。
◎カッシーナ・イクスシー青山本店/名古屋店/大阪店/福岡店
http://www.cassina-ixc.jp/shop/pages/shop_information.aspx
◎フリッツ・ハンセン青山本店/REPUBLIC OF FRITZ HANSEN STORE OSAKA
https://fritzhansen.com/ja-JP/Find%20store
◎yamagiwa tokyo/nagoya/osaka
https://www.yamagiwa.co.jp/showroom/
自分にとってかけがえのない一品と出会うことで、人生に華やぎをもたらしてくれる高級家具。百聞は一見にしかず。ショップを覗いてみてはいかがでしょうか。
参考図書：
CASA BRUTUS「名作椅子と暮らす」
CASA BRUTUS「照明上手」
「テレンス・コンラン流インテリアの基本」（株式会社エクスナレッジ）
「なぜデンマーク人は初任給でイスを買うのか?―人生を好転させる「空間」の活かし方」（きずな出版）
＜監修＞
一級建築士・住宅リフォームコンサルタント Yuu（本名：尾間紫）
photo: Getty Images
・初心者でも簡単に実現できる「オシャレ部屋」～イチから学ぶ間接照明テクニック～
・自由にリフォーム・DIYできる範囲とは？ ～専有部と共用部の境界線～
・SF世界のような日常生活！最新家電が備える驚きの機能
・コラム一覧はこちら
・電気料金明細の確認はこちら
椅子は一脚何千円のものから、何十万円もするものがあります。この価格の違いはどこからくるのでしょう。椅子やテーブルなど生活のために家の中に備える家具は、身近で毎日使うものだからこそ、その人のこだわりやセンスが反映されます。
世界中で愛される名作の椅子や照明を紹介し、高級家具の魅力に迫ります。
高級家具は何が違うのか？
高級家具で長く愛されている名作に共通するのが、道具としての機能性に加えて、優美なラインやバランスを備えていることです。華美ではないミニマルなスタイルなのに完成されている……それが名作と称されるものの特徴です。
家具デザイナーであり、インテリア用品のセレクトショップ「ザ・コンランショップ」を展開するテレンス・コンラン氏は、著書の中で、リビングに求められるのは「身体と視覚の両面での心地よさ」としています。
“身体を優しく支えてくれる椅子やソファーを置き、照明の明るさを調整し、視線を引きつけるポイントとなるものを置くとよいでしょう”
−『テレンス・コンラン流 インテリアの基本』より−
ロングセラーの名作椅子
単に座る道具ではなく、名品が醸し出す空気感を配置する。「余裕」「人生を楽しむ」というライフスタイルには、必ずと言ってよいほど名作椅子が存在しています。
『なぜデンマーク人は初任給でイスを買うのか?』というタイトルの書籍があります。デザインを愛するデンマーク人は、椅子を「時間とお金をかけるべき大切な場所」と考えているそうです。
確かに、椅子は食事や本を読むときなど、家具の中でも身体が接している時間が長いです。そんな椅子を単なる家具と考えずに、こだわりの逸品を選ぶことで、暮らし方が変わってくるのもわかる気がしますね。
では、名作椅子をいくつかご紹介しましょう。
デンマークのデザイナーが生んだ椅子で、「世界一美しい椅子」と称されるのは「Wishbone Chair（ウィッシュボーンチェア）」。1950年発売のこの椅子は、完成度の高いフォルムが醸し出す美しい佇まいが人気で、背もたれの板がY字になっていることから「Yチェア」とも呼ばれています。機械生産することで廉価での量産が可能になり、世界中で愛される椅子となっています。
・Wishbone Chair / Hans J. Wegner
https://www.shop.carlhansen.jp/
（参考価格）90,720円〜 / カール・ハンセン＆サン
また、「LC4 シェーズロング」は、建築家ル・コルビュジエが「休養のための機械」と呼んだ個性的なデザインの寝椅子。人体の曲線に沿うカーブをH字形の台座が支えます。弓形のパイプをずらすことで、寝る角度を自由に変えられるようになっています。
・LC4 Chaise Longue / Le Corbusier
http://www.cassina-ixc.jp/shop/g/glc4/
（参考価格）570,000円〜／カッシーナ・イクシーズ
次に紹介するのは、北欧デンマークのデザイナー、ポール・ケアホルムの「PK22」。ドイツ人デザイナー、ミース・ファン・デル・ローエがデザインした「バルセロナチェア」から影響を受けていることがうかがえます。座り心地を追求したクラフトマンなデザインで、1957 年ミラノ・トリエンナーレ（ミラノで開催される美術展覧会）でグランプリを受賞しています。
・PK22 / Poul Kjrholm
https://fritzhansen.com/ja-jp/pk22
（参考価格）480,600円〜 / フリッツ・ハンセン
「The Egg」は、北欧デザインを代表するデザイナーであるアルネ・ヤコブセンが、コペンハーゲンの高級ホテルを設計した際にデザインしたラウンジチェアです。優しく身体を包み込むシェルは、心地よいプライベート空間を作り出します。
・The Egg / Arne Jacobsen
https://fritzhansen.com/ja-jp/products/lounge-chairs/3316_egg_leather
（参考価格）702,000円〜／フリッツ・ハンセン
これらの椅子は、座る喜びはもちろん、デザインとして完成された視覚的な喜びを兼ね揃えています。
一流デザイナーによる照明の素晴らしさ
部屋の印象に影響を与える照明。たとえば、電球ひとつとっても、暖色か寒色かの違いで部屋や家具の雰囲気もだいぶ変わります。機能的に照らすだけではなく、照明そのものが美しい有名デザイナーによる名品があります。
デンマークの照明デザイナーのポール・ヘニングセンの「PH Artichoke（ピーエイチ アーティチョーク）」は世界中で愛されているペンダント照明です。中央の光源の光が72枚のシェードすべてに当たり、シャンデリアと同じような光を演出します。
・PH Artichoke / Poul Henningsen
https://www.louispoulsen.com/jp
（参考価格）864,432円〜 / ルイスポールセン ジャパン
イタリアの照明デザイナーのジノ・サルファッティの「2097」は、伝統的なシャンデリアを抽象化し、スチールパイプをフレームにし、むきだしの電球を幾何学的に配置した画期的な商品を生み出しました。
・2097 / Gino Sarfatti
http://japan.flos.com/highlights/209730-matt-black
（参考価格）264,297円〜 / 日本フロス
フィリップ・スタルクはフランスのデザイナー。3本の脚部の交点に、カーテンのような白いテキスタイルのシェードがある「Rosy Angelis（ロジーアンジェリス）」は、ミニマルな洗練されたデザインで、部屋をエレガントにするフロアランプです。
・Rosy Angelis / Philippe Starck
http://japan.flos.com/archives/consumer/rosy-angelis
（参考価格）86,400円〜 / 日本フロス
高級家具を扱うときの注意点は？
せっかく出会った一品だから長く大事に使いたいもの。高級家具を扱う際のポイントをまとめました。
【素材に合わせた手入れ方法を購入時に確認する】
長く使うためにはどのような手入れが適切なのか、汚れてしまった場合の適切な処置など、購入時に確認するようにしましょう。
【アフターサービスの有無を確認する】
椅子の場合、座面のファブリック張替やパーツ交換など、メーカーが一定期間修理を保証してくれているのか確認を。また、照明の場合も、接触不良や破損の際どのような対応が可能なのか、事前に知っておくと安心でしょう。
高級家具の価値とは？
最後に、一級建築士・住宅リフォームコンサルタントとして、住宅リフォームの現場やインテリア、設計、工事にかかわってきたYuuこと尾間紫先生に、高級家具の魅力をお聞きしました。
「高品質な家具は暮らしの質を高めてくれます。便利や快適はもちろんのこと、心を豊かにしてくれたり身体を癒やしてくれることもあります。眺めているだけで幸せな気持ちになることもあるでしょう。
高級家具の価値とは、技術と伝統に裏打ちされ、優れた感性を持つデザイナーが作り上げた精神世界を体現する芸術作品です。ゴッホの絵画を持つ喜び、ロダンの彫刻を愛でる喜びが、部屋に置かれたひとつの家具から感じられるのです。
本物の家具のある質の高い暮らし、素晴らしい家具に出会っていただければと思います。」
高級家具は、心を豊かにしてくれる芸術作品。そう考えれば、長く愛され高価になるのもわかります。そんな椅子や照明を自分の目でみて、触れて、名品と言われる理由を確かめることができる店舗をいくつかご紹介します。
◎カッシーナ・イクスシー青山本店/名古屋店/大阪店/福岡店
http://www.cassina-ixc.jp/shop/pages/shop_information.aspx
◎フリッツ・ハンセン青山本店/REPUBLIC OF FRITZ HANSEN STORE OSAKA
https://fritzhansen.com/ja-JP/Find%20store
◎yamagiwa tokyo/nagoya/osaka
https://www.yamagiwa.co.jp/showroom/
自分にとってかけがえのない一品と出会うことで、人生に華やぎをもたらしてくれる高級家具。百聞は一見にしかず。ショップを覗いてみてはいかがでしょうか。
参考図書：
CASA BRUTUS「名作椅子と暮らす」
CASA BRUTUS「照明上手」
「テレンス・コンラン流インテリアの基本」（株式会社エクスナレッジ）
「なぜデンマーク人は初任給でイスを買うのか?―人生を好転させる「空間」の活かし方」（きずな出版）
＜監修＞
一級建築士・住宅リフォームコンサルタント Yuu（本名：尾間紫）
photo: Getty Images
関連リンク
・初心者でも簡単に実現できる「オシャレ部屋」～イチから学ぶ間接照明テクニック～
・自由にリフォーム・DIYできる範囲とは？ ～専有部と共用部の境界線～
・SF世界のような日常生活！最新家電が備える驚きの機能
・コラム一覧はこちら
でんき案内板 おすすめメニュー
・電気料金明細の確認はこちら